本田雅一氏のblog経由で発見した、非常に意味深い議論。こうした発見こそblogの醍醐味ですね。まずはこちらから。
Vistaは未来の展望を見せる偉大なる基礎か、それともハリボテか(パースペクティブ・アイ)
本田雅一の週間モバイル通信・Windows Vistaが描く風景の完成度 (PC Watch)
本田雅一の週間モバイル通信・Windows Vista β1に感じた期待と不安 (PC Watch)
上記はWindows Vista(わたしもまだLonghornと呼んだ方がしっくりきます)の方向転換の遍歴と徐々に明らかになってきた実像から、“当初のVisionは本当に実現されるのか?”という疑問について書かれた本田氏のblogと、その後書かれたコラム。当然コラムの方が情報が密だけど、疑問の本質的なところはシンプルな分、blogの方がとっつきやすいかも。ここにある“Satoshi”さんという方のコメントから、ご本人のblog Life is beautifulへ飛んだところ、MicrosoftのOBで黄金期ともいうべき時期の製品開発に携わっていた方でした。久々にお仕事系興味にひっかかる上質のblogを見つけてとても嬉しかったのですが、今回の関連Entryは6/29と8/1に書かれた次の2つ。
アルファギークはLonghornの夢を見るか?(Life is beautiful)
Google OS を妄想すると未来が見えてくる!? (Life is beautiful)
特に8/1に書かれたGoogle OS〜の方は、議論の本質がほぼ集約されています。以前、梅田望夫氏が海外コラムから"Google PC世代"という表現で紹介しているのと、眺望している現象は同じである(関連Linkなどは、以前に書いたこちらのEntry"Personal Computingにおけるパワーシフト (kush's blog - 2004/7/13)"にだいたいまとまっています)。ただし、これまでの議論と異なるのは、「こちら側(Local環境)からネットワークのあちら側へのパワーシフト」現象そのものでなく、そうした変化の中での「Microsoftのジレンマ」に主眼が置かれている点。これが元Insiderだけあって、非常に面白い。と言っても内輪ネタというわけではなく、携わっていた方だからこその、ジレンマへの深い理解があるから。
当該Entryのコメント欄での議論で「レイヤーの違うものを同じ土俵に上げる議論」という表現がされているが、それこそが、この問題の本質であると言える。このパラダイムシフトはレイヤーを超越するのだ。「集中型のポータルから分散型のサーチへ」というTopicを取り上げたのがちょうど1年前。ネット業界界隈ではきたるべき将来像として、かなり前から当然のように語られているのだけれど、PC業界の人にこの話をすると理解できない人が意外なほど多い。そんなことは彼らのビジネス上の“前提条件”に相反することであり、想像の外側なのだろう。彼らが意識するのは、横並びの他社への“差別化”であるが、しかしSatoshiさんの言う「マイクロソフトにとってのジレンマは、「これからはウェブ・サービスの時代だからOSなんかどうでも良い」という割り切った戦い方が出来ない点です。」はそのままそっくりPC業界の各社に当てはまる。Valueの在り処が全然違うところに行ってしまったら、Valueのないところでいくら“差別化”をはかっても未来はない。現在、唯一収益を上げていて成長しているDellですら、構造的には同じだ。まだ成長の“余地”はあるが、同じ崖っぷちに向かってひた走っていることには変わりない。
既存プレイヤーで唯一面白い位置につけているのはAppleかな。もちろん、サービス・製品の優位性というものもあるけど、ポジション的に見た場合、Appleの強さは「持たざる者の強さ」だと思う。そういう意味ではMicrosoftに勝てなかったSunも持たざる者になり得ると言えるだろう(技術を持つSunを「持たざる者」とする見方には異論もあるだろうが)。Sonyも過去の栄光を引きずらず、新しいパラダイムにおいて「自分達は“持たざる者”である」と割り切って攻めに姿勢に転じることができれば、面白い位置に立てるのではないかという気がする。
議論の中心からは少し外れるけれど、本田氏のコメントにある、
ベルビューなんかも、昔に比べるとお金持ちが本当に多くなって、以前は想像も出来なかったような大きな商業ビルも建設中のようですし、ワシントン湖畔も高級住宅がえらく増えて、さらに言えばマイクロソフトからの帰宅渋滞の時間帯も以前より早くなっているような。シースターとかの高級レストランも、毎日のように予約でいっぱい、マイクロソフトばっか、という状況のようで、以前のコンピュータギークが集うマイクロソフトのイメージからは離れてきましたね。プログラマよりもMBAのインテリの方が似合う。
それが悪いとは言わないけれど、OSのようなものを作る会社としては、やや後退してきているのかなとは思います。
という表現がある意味非常に的を射ているように思う。かつて「集中 v.s. 分散」が議論されていた80~90年代、PC陣営は「持たざる者」であり、攻める側だった。いつの間にか「持つ者」になり、そして何かを失った彼らは、どこへ向かうのだろうか。
この辺の議論がコンピューティング・プラットホームを考えるに本質の議論になるのでしょうね。そして、ケースとしてGoogleとアップル、日本のキャリア(そのついでに米国Yahooかな?)を持ってくるのが妥当なアプローチだと同じく思います。
Posted by: SW | August 10, 2005 at 03:19 AM
コメントありがとうございます。
今回、長くなったので触れなかった要素がたくさんあるのですが、方向性としては既に示されているものの、各プレイヤーがその中でどうするのか、どうなるのかがまだあまり見えてこない。Microsoft v.s. Netscapeの例にあるように、既存プレイヤー(持つ者)がパワーで押し切るケースも過去の例ではいくらでもあるわけで。
対して、挑戦者としては戦うための資本が必要。GoogleとAppleはそれぞれの分野でのデファクトとなり、ドル箱を得てしまったために、いろいろな動きが取り得るけど、それはある意味「持つ者」の強さであるし。まだLegacyに引きずられるところまで古びてないけど、いつか強みが弱みに変わる瞬間がくるかもしれない。また、その他多くの「持たざる者」である挑戦者は「持つ者」による力技に耐えて戦いきることができるのか。
ところで「日本のキャリア」とは、どんなところをイメージしてますか? 単なるサービスプロバイダーとしてではなく、市場をリードできるような企業って正直あまり思いつかないのですが。。
Posted by: kush | August 10, 2005 at 05:17 AM
こちらもつけといた方がいいかな。
関連LINK:
PCのコモディティ化 (Life is beautiful)
http://satoshi.blogs.com/life/2004/12/pcpcpcpc_tinao_.html
Posted by: kush | August 10, 2005 at 05:23 AM
今後の趨勢の細かいところは読みにくいですよね。でも、ユーザーベースを確保してサービスラインと直結する強みは大きいという感じの話をここの方としてました。
http://kazuho.exblog.jp/
なので、特に日本は、Yahooがキープレイヤーだと思います。
> ところで「日本のキャリア」とは、どんなところをイメージしてますか?
これは携帯キャリアの意味です。案バンドルが進みつつありますが、それでも寡占力が強いので見なければならないところかと。ISPは分散しすぎてコモデティ化してしまってます。
細々省いて結論から書くと、現時点の産業アーキテクチャーで最も強い資産と、キャッシュカウ、手元資産(特に時価総額)を持っているところが勝ち抜くには一番有利だろうと思います。簡単にマトリクス作って確認すると該当するのはほとんどいません。
Posted by: SW | August 14, 2005 at 06:47 AM
>ユーザーベースを確保してサービスラインと直結する強みは大きい
そう言われれば確かにそうなんですよね。Yahooや携帯キャリアからクリエイティブなものが生まれる、という感覚がほとんどないので、あまり視野に入れてなかった、というか、正直興味が持てないというか(苦笑) 外から面白いものが出てきても、flickrやLAUNCHのように買っちゃったり、提携で供給者になる可能性はおおありなんですけど。
>簡単にマトリクス作って確認すると該当するのはほとんどいません
多くはやはりM&Aで手に入れるんでしょうか。GoogleやAppleのように自前(または買収も自前の補強として)で、というのが見てる分には面白いんだけどなあ。やっぱり。
Posted by: kush | August 16, 2005 at 05:00 PM